こんなに会えないのに変わらず好きと言うのは不思議なもんですわね。
深刻な好き。
昨日から半音下がって聞こえる。世界の音が。
大好きな音楽を聴いても気持ち悪い、テレビの雑音には耐えられない、電車の発車メロディーが気持ち悪い。
なのに、先生の声は、そのままでした。
深刻だなあ、これは。
なんて深刻なんだろうと思って、先生との朝食を想像しながら先生にまじめな質問をしました。
先生はすぐに身を乗り出すみたいにしてまじめになって答えてくれました。
先生は教科書みたいな喋り方をする。私はそれがさみしいので、なるほどとうなづきながら次の質問を考えています。
「先生、背中にごみがついてますよ」と正面から言ってみたい。
不自然なコミュニケーションを取りたい。こんなスムーズなコミュニケーションはつまらない。
有名な学者は私と先生が二人で歩いているところを見て「不和だ、淫乱だ」とコメントしたそうですが、それは気にするに値しないことです。先生はCDの裏を不用意に触るような人間ではないと、私はわかっています。一方私はCDの裏を平気で触ってしまう一面もある人間なのです。有名な学者はそこんところがよくわかっていません。有名な学者は鉛筆削り器にシャープペンシルをつっこんでしまうような人間です。そんな人間に私と先生の間のことをああだこうだ言われたくありません。
先生はうつぶせでは寝ないでしょう。私はうつぶせでないと寝れない日があります。
知らないけど、私は先生のことなんてなんにも。
不貞腐れてきてしまいました。
目の前にいる先生にどうしてこんなに惹かれているのかわからないけど、
惹かれてしまってどうにもならないのは確かなのです。
まじめな先生は私にまた質問はありますか、と尋ねました。
質問なんて、いくらでもあるんですけどね…。
「大丈夫です!」
いつも気持ちとは裏腹なのです。
先生は下心が見えるような見えないような微妙な所です。もし下心が本当にあるのなら、相当やり手の変態です。私は見透かしたつもりになっていますが、本当に見透かされているのは私の方なのかもしれません。それに取り込まれたのは私ですからね。
この包まれるような感じは何なんだろう。
このままどこかへ行きたくなる。音もにおいもない風だけが吹くお花畑へ二人で行きませんか?