作文帳

6分前

それで

普段私が考えてることなんて

好きな人のこと 仕事に行きたくない 家事がめんどくさい お風呂めんどくさい お腹空いた 眠い 何もしたくない 

毎日これらの堂々巡りなんです。

今日中華料理屋で食べた焼き餃子がとても美味しかったなとか

今日見た映画つまんなかったなとか

電車に乗って景色を眺めるのが好きだなとか

そういう具体的なことたちってなかなか忘れてしまいがち。

何か物足りないけれど きっとこれからもずっと何か物足りないのでしょ。何を得たって、永遠に物足りないものなんでしょ。

そんなのわかってるんだからねって

少しでは語り尽くせない私の人生を誰かに説きたい。その相手が好きな人だったらなおよい。 

 

私はアイスクリームを食べながらあなたに甘い視線をよこすのさ。ぜひ見てってよね。こども舌のあなたは,喜んでバニラのアイスクリームを食べる。私はおとな舌だから、ハーゲンダッツのラムレーズンを食べる。あなたはハーゲンダッツなんて絶対に買わない。口の中に溶けたラムレーズンをあなたにあげた。やっぱラムレーズンはあんま好きじゃないなってあなたは自分のバニラで口直しをする。こども舌ですもんね、ってこたえると、なんかちょっと照れた顔してスプーンをなめる。けしからんなあって言いたげな顔。最後の一口だった。私には一口もくれなかった。ごめんごめんって、言われた。ちょうだい、バニラ。もうなくなったから、バニラ。

春のアイスはなかなか溶けないけれど、夏のアイスより甘く感じる。甘ったるくて咳き込んだ。

今日はね、嫌な夢を見たからあなたに会いに来たんだ。嫌な夢から醒めた時にはね、あなたが抱きしめて慰めてくれたらどんなにいいかって思うの。たった1人布団でつうつうと涙流して、胸のつかえを取るのはいくらなんでも寂しすぎるから。

アイスを食べ終えたあなたは、冷蔵庫から取り出した麦茶をコップに注ぐ。私は麦茶がきらい。私のコップにも波々注ぐ。私は麦の香りを嗅ぐと頭が痛くなるのです。前に言わなかったっけ?

忘れているなんて、さみしくなるのです。

しかもあなたはそのまんまの顔で、また同じ話をしだす。小学生の頃、好きな女の子の机の上に小さなピンク色の花を置いた話。嫌がらせでもなんでもなく、ただその花が好きな女の子に似ていたから、というなんとも文学的な感受性豊かな理由で、お花を机に置いたら、好きな女の子が泣き出していじめだって大問題になったって話。その話、この前も聞いた。おんなじ話をしないで。

それも、悲しいの私は。

窓をあければ紛れる悲しさ。とっくに桜も散ったけど、夜は桜が散ったのかどうかなんて関係ない。春の夜は甘美で思い出に忠実でみんな隙だらけ。通りすがりの酔っ払いの声が響いて、空では消えそうな星がもうちょっと頑張ってちらちら輝く。ここにいるよって。私には届いたから大丈夫。安心してって呟いた。

なに?ってこっちを向いたあなたに私は小学生の頃好きだった男の子の話をする。仕返し。