作文帳

6分前

日本武道館

超越していたから、神のように見えたけれど、神を巡って庶民のあいだで小さな争いが起きていたことも今ではよい思い出にできそうだ。これは数年後に映像化されたものを見る私の感想。今はそんなことさらさら思えない。涙は止まらなかったけれど、それは争いが原因なのではなくて、神があまりに神々しかったからだ。まっしろな鎮守の森に鎮座する女神と少しの灯り。広い空間に二つの音色だけがたっぷり響いた。あの遠くの小さな一人の人間が奏でる音だけで空間が飽和していてあまりに力強かった。自分の光の出し方がよくわかっているのだと思った。そして自らが光となり私たちを連れ出してくれるのだと思った。

 

遠くて近くて、どう手を伸ばしても届かない存在だと諦めた。けれど、それは前向きな諦めなのだ。私は羨ましくて羨ましくて苦しい、あなたになりたい。でもあなたになるためには、私が私をまっとうするしかないのだ。あなたはあなたをまっとうしているから、あんなに素敵に魅惑的に眩しく見えるのだ。

そう気づいたけれど、私をまっとうするのってすごく難しい。やっぱり私は私が好きなようで、好きではない。誰よりも卑下している。違うのに。でも好きになんてならなくていいのかもしれない。好きじゃないなりにも私をまっとうすることはできるはず。

 

私の特別好きな歌ばかり歌ってくれた。私のために歌ってくれた。みたいに思わせてくれる。そもそも私のための歌だと思ってる。あまりに私の歌だから。それは許してほしいと思う。