作文帳

6分前

長老

私はあなたと一緒にいたい。

 

もうすぐ、夜が明ける。

鳥は私を、迎えに来てくれる。

ようやく、どこかへ行けそう。

 

離れ小島に一人、ぽつねんと取り残された、

雨が降り続いて私はまるで、醜い白鳥の子。

ふとここで見つけた、何もなく空虚な箱。

誰なのあなたは、と、窓からのぞく目。

「みいつけた」

ようく、見て。誰も見ていない。

私は1人叫んで泣いた。相変わらず誰も見ていない。

西日が暑くてワンピースの中は湿っている。

貴方の腕を噛んでみたい。噛んでみたら、あなたはどうする?

ほのかににおいがした。カレーの匂いだ。

あなたの腕は硬そう。

私の好みは硬そうな、フランスパンみたいな、腕。

もちもちの白パンではなくてね。

そのまま指もなめる。あなたの指は短いね。少し不格好なの。

広い野原に寝転がる。夢が広がる。何も言いたくない空。こうしてじっくり見据えると、雲は変幻自在に形を変えて、私の元からさっさと去ろうとする。行かないで、とは思わない。雲はそうあるべきだ。私にもそれくらい、わかるのです。

 

なんだかね、その大きな目で見られるとわからなくなるの。

少年みたいな、わくわくした目をしてますよね。そう言ったら照れていた。

あなたが喋っている間、私はいつもまつげを見る。少し上に上がったまつげ。

どっと疲れてしまった。大きくハグをしてください。

 

あなたは、無機質とは無縁だ。有機物らしい人だ。

ずっとご飯を食べていてほしい。ゴミも散らかしていてほしい。

そんなに照れないで。

照れるのは私の前だけじゃないって気づくの悲しいなって

ふと一人思い出すあの日の出来事。

雑然とした毎日に追われて、お香をたくのも一苦労。

あなたに言われた悔しい言葉。どこへ行ったって思い出すのだから、

鳥が迎えに来てくれたけど、どうせどこへも行けないんだって

今日は鳥籠の中に籠る。鳥籠の中はあったかい。暗くて、しんとして、夢を見る。

あ、鳥籠が揺れた。

あなたが持ち上げた。鳥籠。

ねえねえ、気付いてよね。

大きな瞳でこっちを見てよね。

じっと見つめて私は照れちゃうけれど、私あなたの腕を早く噛みたいの。

なんでもいいけど、早く噛みたいのです。