作文帳

6分前

青いワンピースの日(架空)

学校にいたころは毎日会えたのに、一つも記憶がありません。

しろくてまるい月が私を冷たく見下ろす。象徴するものに気づけたらいいけれど、私には多分それだけの知識が足りない。大声で叫ぶのを我慢することしかできない。叫ぶのに一生懸命になりすぎて、リズム感を失っている。車の中では唯一大声を出す事ができる。

 

昼ごはんはいつも近くの商店街で買う。中華系の人たちが多くいる商店街。ひどく安い焼きそばがお気に入り。イヤホンが耳に刺さっている。私は常時音楽を聞いていないと生きていられない。聴いていない時は頭の中で流すか、鼻歌をうたう。たまに無音が恋しくなるときだってあるけれど、仕事中ただでさえ心が無音もしくは雑音だらけなのだから、ぜんぶシャットダウンして好きな音のみの世界に逃げたい。電話で聴きたくない話や怒った声を聞く。好きな音だけにして。

横断歩道にて、職場の好きな顔の人とすれ違う。この人は、キラキラした目をしている。一度だけ、目を合わせて話した事がある。目に吸い込まれるかと思って、焦った。おそらく煙草を吸いに近くの公園に行くのだろう。この人にとってのタバコが、私にとっての音楽なのであった。

 

数か月前に高円寺の古着屋で見た青いワンピースを買わなかったことをずっと後悔している。水色に濃い青色の襟。質素で清廉でとても良かったのです…。ちょっと高いなあと思ってその時は諦めてしまった。一か月後くらいにやっぱり諦められなくて再び店にいったけど、もうなかった。この世の中、そんなにこれは欲しい!!と思える服って意外とないのだ。それを肝に銘じたことにより、私は今金欠に陥っている。

公務員になってから、私は無難にいようと努めた。公務員は無難が正義だ。そう思って、なるべく無難な服を着ていた。しかし、それはあまりに退屈だった。耐えられなくなって徐々に変な色のセーターを着ていくようになった。これでもずいぶん無個性なのだが、まだましだ。無個性ってこんなにつらいのだな。でも私には個性を求める集団に入るような気概はないし、そこに入れば無個性が輝く方なのだ。ようは、ただの天邪鬼で、右にならえがそれなりに嫌いだけど、それなりに合わせなくては落ち着かないような、ださめの素質を持った人間なのだ。変だといわれると少し嬉しくなってしまうのがその証拠。普通をそれなりに恐れているが、普通が一番楽ちんということも、普通をそれるのが怖いという気持ちもあるのです。そして仕事をして思いますが、私はみんなが普通にしていることが普通にはできません。みんなより労力を要するし、なんなら不可能です。そしてあんまりそういうことがこなせる普通の人間になりたくないです。こうしてそれなりに生きづらく、それなりに生きやすく死んでいくのでしょう。

でもやっぱり服はかわいくないとだめです。あのワンピースが、欲しいのです。