作文帳

6分前

あまいもの

明日世界が滅亡するらしいので、今日は朝早く起きて、あなたのだいすきなモンブランを作っている。わたしはお菓子作りが好きで、暇な週末はよくクッキーとかチーズケーキとか作るのだけど、それはこの日のためにやってきたことかもしれないなとぼんやり考えた。自分のためにやってきたことだけど、最後の最後にあなたのためにやってきたことになったの。それとも、わたしはずっとこの日を望んでいたのかもしれない。臆病で、あなたのために何かをするということができなかったけれど、最後くらいは横柄になれた。こんなに心地よくて嬉しいことはない。何気なく訊いた「好きな甘いものはなに?」がわたしの最後を飾るすべての答え。その時の自分に感謝した。いつになくなめらかなで濃密な生クリームが仕上がった。最後に大きな栗をてっぺんに置いて、できあがり。今までで一番美しく、かわいらしくできた。

モンブラン二個をケーキの箱に丁寧に入れて、コートを羽織って家を出た。あなたの家に向かうには、いつもは自転車を使うのだけど、ケーキが崩れちゃいやだし、なんとなくゆっくり歩きたい気分だったから、今日はそのまま歩いて行くことにした。世界最後の日の空は私が生まれた日の空と同じだった。